DataBase

【徹底解説 MySQL】レプリケーションの構築・運用

MySQLのレプリケーションを有効化することで、複数のサーバで同一のデータを保持することができます。
レプリケーションの主な目的としては、障害時に備えた冗長化、負荷分散による性能向上、サーバを分けることによる役割分担、バックアップの代用などが挙げられます。

MySQLのレプリケーションは、1台をソース(マスタ)、他の複数のサーバをレプリカ(スレーブ)として、マスタからコミットされたトランザクションログの内容をレプリカ(スレーブ)に同期します。
MySQLへの更新処理は全てソース(マスタ)に対して行うことで、レプリカ(スレーブ)へデータ整合性が取れたレプリケーションを実現します。
レプリカ(スレーブ)は読み取り専用として利用することができるため、読み取りアクセスが多いデータ集計などの処理にレプリカ(スレーブ)を利用することで負荷分散が図れます。

一般的に、データベースのレプリケーションには、データ複製のタイミングによって同期型と非同期型に分類することができます。

●同期型
データの変更から全ての複製先への同期が一連の処理で行われる

●非同期型
データの変更と複製先への同期を分け、それぞれ独立して処理される

MySQLのレプリケーションでは、デフォルトでは非同期型をサポートし、プラグインをインストールすることで同期型と非同期型の中間に当たる準同期型をサポートしています。

非同期レプリケーションと準同期レプリケーションの仕組みについて解説します。

先ほど、「ソース(マスタ)からコミットされたトランザクションログの内容をレプリカ(スレーブ)に同期する」と説明しました。
レプリケーションを利用していない構成と同様に、MySQLにデータ更新を行い、コミットを実行すると実データの更新と更新内容をバイナリログに書き込みます。
バイナリログは、リストア時のデータのリカバリに用いられますが、レプリケーションもバイナリログを利用してデータの同期を行います。

MySQLのレプリケーションで同期作業を行っている実体は、レプリカ(スレーブ)サーバの「I/Oスレッド」と「SQLスレッド」です。

●I/Oスレッド
I/Oスレッドは、最初にソース(マスタ)に接続してバイナリログの変更を待ちます。
マスタでトランザクションがコミットされバイナリログの変更が発生すると、I/Oスレッドがマスタのバイナリログをリレーログとしてレプリカ(スレーブ)にコピーします。
リレーログにコピーが終わると、再度ソース(マスタ)に接続してバイナリログの変更を待ちます。

●SQLスレッド
SQLスレッドは、I/Oスレッドによって書き込まれたリレーログを読み取り、レプリカ(スレーブ)サーバのデータ変更を行います。

非同期レプリケーションと準同期レプリケーションは、I/Oスレッドによるリレーログの書き込みをアプリケーションのトランザクションに含めるかどうかが異なります。

今回はデフォルトのレプリケーションを構築・運用する方法、注意点などを書いていきます。

MySQLのレプリケーションの構築

マスターとスレーブの設定

マスターデータベースとスレーブデータベースを作成します。各データベースは独立して機能し、それぞれ固有のデータを持ちます。

マスターデータベースのmy.cnfファイルを編集し、以下の設定を追加します。

server_id = 1
log_bin = /path/to/binary_log

server_idはユニークな値に設定し、log_binはバイナリログのパスを指定します。

スレーブデータベースのmy.cnfファイルを編集し、以下の設定を追加します。

server_id = 2

server_idはマスターデータベースとは異なるユニークな値に設定します。

レプリケーション用のユーザーを作成します。マスターデータベースで以下のSQL文を実行します。

CREATE USER 'replication_user'@'slave_host' IDENTIFIED BY 'password';
GRANT REPLICATION SLAVE ON *.* TO 'replication_user'@'slave_host';
FLUSH PRIVILEGES;

slave_hostはスレーブデータベースのホスト名またはIPアドレスに置き換えてください。

レプリケーションの設定

マスターデータベースでバイナリログを有効化します。my.cnfファイルの設定を反映させるためにMySQLを再起動するか、SET GLOBALコマンドを使用します。

SET GLOBAL log_bin = ON;

スレーブデータベースでレプリケーションを設定します。スレーブデータベースで以下のSQL文を実行します。

CHANGE MASTER TO MASTER_HOST='master_host', 
MASTER_USER='replication_user', 
MASTER_PASSWORD='password', 
MASTER_LOG_FILE='binlog_file', 
MASTER_LOG_POS=log_position;
  1. master_hostはマスターデータベースのホスト名またはIPアドレスに置き換えます。
  2. binlog_fileはマスターデータベースの最新のバイナリログファイル名を指定します。
  3. log_positionはマスターデータベースのバイナリログファイル内の位置を指定します。

スレーブデータベースでレプリケーションを開始します。

レプリケーションの開始と監視

スレーブデータベースでレプリケーションを開始します。

START SLAVE;

スレーブの状態を確認し、正常にレプリケーションが動作していることを確認します。

SHOW SLAVE STATUS\G

上記のコマンドで表示される情報には、レプリケーションの状態や遅延などが含まれます。特に、Slave_IO_RunningSlave_SQL_RunningYesであることを確認します。
「\G」は表示を行表示にして見やすくするためのオプションです。

レプリケーションのモニタリングとトラブルシューティング

  1. 定期的にレプリケーションの監視を行います。モニタリングツールや監視スクリプトを使用して、レプリケーションの状態や遅延を監視します。
  2. レプリケーションの遅延が発生した場合やエラーが発生した場合には、以下の手順でトラブルシューティングを行います:
    • SHOW SLAVE STATUS\Gコマンドの出力を確認し、エラーメッセージやスレーブの状態を把握します。
    • エラーメッセージやステータスを解析し、原因を特定します。一般的な原因としては、ネットワークの問題、スレーブデータベースの遅延、バイナリログの欠損などがあります。
    • 必要な修正や手動の同期が必要な場合には、適切な手順を実施します。これには、スレーブの停止と再開、バイナリログの再送信、スレーブの再同期などが含まれます。

フェイルオーバーと高可用性

  1. マスターデータベースが障害や停止した場合には、フェイルオーバー手順を実施してスレーブデータベースを新たなマスターとして昇格させます。
  2. フェイルオーバー手順には、以下のステップが含まれます:
    • スレーブデータベースのレプリケーションを停止します。
    • アプリケーション側の接続情報を変更して、新たなマスターに接続します。
    • フェイルオーバー後に元のマスターデータベースが復旧した場合には、以下の手順でスレーブとして再設定します。
      • 元のマスターデータベースで新たなバイナリログファイルと位置を確認します。
      • スレーブデータベースで以下のSQL文を実行して、新たなマスターとしての情報を設定します。
      • new_master_hostは元のマスターデータベースのホスト名またはIPアドレスに置き換えます。
      • new_binlog_filenew_log_positionは元のマスターデータベースの最新のバイナリログファイル名と位置に置き換えます
    • スレーブのレプリケーションを再開します。

バイナリログファイルと位置を確認

SHOW MASTER STATUS\G

新たなマスターとしての情報を設定

CHANGE MASTER TO 
MASTER_HOST='new_master_host', 
MASTER_USER='replication_user', 
MASTER_PASSWORD='password', 
MASTER_LOG_FILE='new_binlog_file', 
MASTER_LOG_POS=new_log_position;

スレーブのレプリケーションを再開

START SLAVE;

これらの手順に従うことで、レプリケーションのフェイルオーバーを実施し、データベースの高可用性を確保することができます。ただし、フェイルオーバーの手順は環境や要件によって異なる場合がありますので、実際の運用では事前の計画とテストを行うことが重要です。また、運用中には定期的なモニタリングやトラブルシューティングを行い、レプリケーションの健全性を確認し続けることも重要です。

モニタリングと監視

  1. レプリケーションの運用中は、定期的にモニタリングと監視を行い、レプリケーションの健全性を確認します。
  2. 監視ツールやログ監視の仕組みを活用して、以下の情報を収集・監視します:
    • レプリケーションの遅延:マスターとスレーブのデータ同期の遅延時間を監視し、許容範囲内に保つことが重要です。
    • エラーログとアラート:レプリケーションに関するエラーログやアラートを監視し、異常が検出された場合には適切な対応を行います。
    • レプリケーションの停止:レプリケーションが停止した場合には、早期に検知して対処する必要があります。
  3. 監視結果やアラートを適切に処理し、適切な対応を行うことで、レプリケーションの安定性と可用性を確保します。

レプリケーションのバージョンアップとメンテナンス

  1. メンテナンスやバージョンアップの際には、レプリケーションに影響を与えないように注意が必要です。
  2. バージョンアップ前には、テスト環境での試験やバックアップの作成を行い、予期せぬ問題が発生しないか確認します。
  3. バージョンアップ時には、マスターデータベースからスレーブデータベースへのアップグレード手順や互換性のチェックを行います。

レプリケーションの構築と運用は、環境や要件に応じて異なるケースがあります。上記の手順は一般的な指針ですので、実際の運用では公式ドキュメントや専門家のアドバイスを参考にしながら構築することをおすすめします。また、重要なデータの保護や障害対策を考慮し、バックアップと復旧戦略も併せて検討することも重要です。

フェールオーバーテストとドリル

  1. レプリケーションの運用において、フェールオーバーのテストとドリルは重要です。
  2. 定期的にフェールオーバーテストを実施し、スレーブデータベースを新たなマスターに昇格させる手順を確認します。
  3. テスト環境でのドリルを通じて、フェールオーバー手順の熟練度を向上させ、実際の運用時に迅速かつ正確に対応できるようにします。

レプリケーションの監査とセキュリティ

  1. レプリケーションの運用において、セキュリティ対策と監査を実施することは重要です。
  2. レプリケーションの通信を暗号化することで、データの安全性を確保します。
  3. アクセス制御やアクセスログの設定により、レプリケーションに関わる権限や操作を厳密に制御します。
  4. 監査ログを有効にして、レプリケーションの操作やイベントを記録し、不正アクセスや問題の追跡・解析を行います。

ドキュメントと手順書の作成

  1. レプリケーションの構築と運用に関するドキュメントや手順書を作成し、メンテナンスやトラブルシューティング時に参照できるようにします。
  2. 具体的な手順や設定、コマンドの記述に加えて、特に重要なポイントや注意事項を明確に記載します。
  3. ドキュメントは定期的に更新し、環境の変更や新しいバージョンへの対応などを反映させます。

以上が、MySQLのレプリケーションの構築と運用に関する一般的な手順と実例です。ただし、環境や要件によって異なるケースがありますので、具体的な構築や運用に際しては、公式ドキュメントや専門家のアドバイスを参考にすることをおすすめします。また、セキュリティや可用性に対する要件を適切に考慮し、適切な対策を講じることも重

要です。レプリケーションの構築や運用は、データベースシステムの重要な要素であり、慎重な計画と適切な管理が求められます。定期的なモニタリング、バックアップ、セキュリティ対策、フェールオーバーテストなど、継続的なメンテナンスと監視が必要です。

また、レプリケーションの設計と運用に関しては、データベースの性能や負荷、ネットワークの帯域幅などの要素も考慮する必要があります。特に高トラフィック環境では、十分なリソースを確保し、適切なハードウェアとネットワークインフラストラクチャを用意することが重要です。

最後に、レプリケーションの障害対策と復旧戦略を備えておくことも重要です。データの損失やシステムのダウンタイムを最小限に抑えるために、バックアップとリカバリプロセスの確立、災害復旧計画の策定、データの整合性チェックなどを行うことが必要です。

以上が、MySQLのレプリケーションの構築と運用に関する実例と手順の解説です。これらの手順を参考にしながら、自身の環境と要件に合わせてレプリケーションを構築し、安定した運用を行うことをおすすめします。