VBAは死なない、VBScriptは死ぬ、VB6は生き残る|2026年版Visual Basicの本当の未来
「VBAは近いうちに廃止される」
「ExcelマクロはOffice Scriptsに置き換わる」
「古いVB6アプリはWindows 11では動かない」
「Python in ExcelがVBAの後継になる」
Visual Basicを取り巻く将来予測には、似ているようで異なる技術が混同された情報が少なくありません。
2026年現在、VBA、VB6、VB.NET、VBScriptは、同じVisual Basicという名前を持ちながら、Microsoftの方針上はまったく異なる方向へ進んでいます。
結論から言えば、次のとおりです。
VBAは死なない。
VBScriptは段階的にWindowsから消える。
VB6は開発環境が死んでも、実行環境はWindows 11で生き残る。
VB.NETは廃止されないが、新しい用途へは広げられない。
つまり、Visual Basic全体が終了するのではありません。
Visual Basicを何にでも使ってよい時代が終わり、用途ごとに技術が分割されているのです。
本記事では、Microsoftの公式方針と最新の開発状況を基に、次の内容を徹底的に整理します。
- VBAに正式な廃止予定はあるのか
- VB6アプリがWindows 11でも動く本当の理由
- VB.NETが「死んでいないが成長もしない」と言われる理由
- 2027年前後から始まるVBScript無効化
- 新しいOutlookでVBAとCOMが使えない問題
- Office ScriptsがVBAの完全後継ではない理由
- Python in Excelが業務自動化を置き換えない理由
- 64bit Officeで古いVBAが壊れる本当の原因
- VB6互換処理系twinBASICとRAD Basicの現在地
- 社内に存在するVBA・VB6・VBScript資産の調査方法
- 今後5年間の継続、改修、移行、再構築の判断基準
最初に整理:Visual Basicは一つの製品ではない
Visual Basicという名前で呼ばれる技術は、少なくとも次の四つに分かれます。
| 技術 | 主な用途 | 現在の立場 |
|---|---|---|
| VBA | Excel、Access、Word、Outlookなどの自動化 | Officeデスクトップ内で継続 |
| VB6 | Windowsデスクトップ業務アプリ | IDE終了、既存ランタイムは継続 |
| VB.NET | .NET、Windows Forms、クラスライブラリ | 安定・保守路線 |
| VBScript | Windowsスクリプト、ログオン処理、管理作業 | 段階的廃止 |
この四つは、文法や名前が似ていても、実行環境、サポート方針、移行先が異なります。
VBScriptの廃止を根拠に「VBAも廃止される」と説明することはできません。
VB6 IDEのサポート終了を根拠に「VB6で作られたEXEが動かなくなる」とも言えません。
2026年時点の結論一覧
| 技術 | 廃止予定 | 今後の見通し | 企業が今すること |
|---|---|---|---|
| Excel・Access VBA | 公表なし | デスクトップ業務で継続 | 署名、台帳化、64bit対応 |
| Outlook VBA | 新Outlookでは非対応 | Classic Outlook依存 | Graph、Power Automate、Office.jsを検討 |
| VB6 IDE | 2008年サポート終了済み | 公式開発環境としては終了 | 開発環境の隔離と移行準備 |
| VB6ランタイム | Windowsライフサイクルに連動 | Windows 11/Server 2025でもサポート | OCX、32bit、印刷、ODBCを調査 |
| VB.NET | 公表なし | 新しいワークロードへ拡張しない | 既存WinForms等を最新.NETへ移行 |
| VBScript | 正式に廃止予定 | 2027年前後から既定で無効 | PowerShell等へ移行 |
| Office Scripts | 継続投資 | Excelクラウド自動化を担当 | 定型Excel処理を選別して移行 |
| Python in Excel | 継続投資 | 分析・統計・可視化を担当 | VBAではなく分析処理を移行 |
| twinBASIC | 開発中 | VB6互換・64bit化の有力候補 | 非本番アプリで互換性検証 |
| RAD Basic | 開発中 | VB6ソース互換環境を目指す | 対応機能を確認して評価 |
VBAに正式な廃止予定はあるのか
2026年7月時点で、MicrosoftはVBA自体の廃止時期を公表していません。
MicrosoftのVB6サポート方針でも、VBAはVB6とは別の技術であり、Officeに含まれるため、VBAのサポートはOffice製品のサポート方針に従うと説明されています。
つまり、次のような説明は正確ではありません。
VBScriptが廃止される
↓
同じVisual BasicなのでVBAも廃止される
VBScriptとVBAは別の実行環境です。
VBAは現在も、Excel、Access、Word、PowerPoint、Classic Outlookなどのデスクトップ版Officeで利用されています。
ただし、「廃止されない」と「今までと同じ運用でよい」は別問題です。
VBAを取り巻く環境は、次の方向へ変化しています。
- インターネットから取得したマクロは既定でブロック
- 64bit版Officeへの対応が必要
- 新しいOutlookではVBAを利用できない
- クラウド処理はOffice ScriptsやPower Automateへ分離
- 分析処理はPython in Excelへ分離
- 社内マクロにはデジタル署名と管理が求められる
VBAは消えるのではありません。
無管理で配布される野良マクロが使いにくくなり、管理された社内アプリとして残ると考える方が現実に近いでしょう。
インターネットから取得したVBAは既定でブロックされる
Microsoftは、VBAマクロがマルウェアやランサムウェアの侵入口として悪用されてきたことを理由に、インターネット由来のOfficeファイルに含まれるマクロを既定でブロックしています。
対象には、次のようなファイルが含まれます。
- メールへ添付されたxlsm
- Webサイトからダウンロードしたxlsm
- TeamsやSharePointからローカルへ保存したファイル
- インターネット扱いとなるネットワーク共有上のファイル
- ダウンロードしたxlam、xltm、dotmなど
Windowsは、インターネット由来のファイルへMark of the Webと呼ばれる情報を付加します。
この情報が残っているファイルでは、以前のように黄色いバーから単純に「コンテンツの有効化」を選択できない場合があります。
今後の企業向けVBA運用
Microsoftのセキュリティベースラインでは、マクロを必要としない利用者ではマクロを無効化し、必要な利用者では信頼された発行元によってデジタル署名されたマクロだけを許可する構成が推奨されています。
従来の運用
担当者が.xlsmを作る
↓
メールで配布する
↓
利用者が警告を解除する
↓
誰が変更したか分からない
今後の運用
VBA資産を台帳登録する
↓
ソースコードを管理する
↓
社内証明書で署名する
↓
信頼された発行元を管理配布する
↓
変更時に再署名する
VBAの未来は、個人が自由に作るファイルから、企業が管理するコードへ移行していきます。
VB6は本当にWindows 11でも動くのか
VB6のIDEとVisual Studio 6.0 IDEは、2008年4月8日にサポートを終了しています。
Microsoftは、現在ではVB6アプリを作成・保守するための公式にサポートされた開発方法は存在しないとして、現代的な技術への置き換えを推奨しています。
ところが、VB6で作られた既存アプリケーションの実行環境は、現在もサポートされています。
Microsoftの公式サポート表では、VB6ランタイムと主要な拡張ランタイムファイルは、Windows 11とWindows Server 2025でもサポート対象です。
| 環境 | VB6ランタイム | VB6 IDE |
|---|---|---|
| Windows 11 | サポート | 非サポート |
| Windows Server 2025 | サポート | 非サポート |
| 64bit Windows | 32bit WOW環境でサポート | 非サポート |
| Server Core | 非サポート | 非サポート |
ここにVB6の奇妙な状況があります。
開発環境
→ 18年以上前にサポート終了
既存アプリの実行環境
→ Windows 11でも公式サポート
Microsoftは、既存VB6アプリケーションがサポート対象のWindows上で「Just Work」、つまりそのまま動作することを目標にしています。
ただし、保守対象は重大な回帰や重要なセキュリティ問題に限られます。
VB6が動くことと、安全に保守できることは別問題
VB6ランタイムがWindows 11でサポートされていても、業務アプリ全体が安全に動く保証はありません。
実際に問題になるのは、VB6本体よりも周辺部品です。
- 古いActiveXコントロール
- OCXファイル
- 古い帳票ライブラリ
- 32bit ODBCドライバー
- 古いAccessデータベース
- DAO、RDO、ADO
- Internet Explorer依存部品
- 古いプリンタードライバー
- ハードウェア制御DLL
- 古い通信ライブラリ
Microsoftも、第三者製のOCXやActiveXコントロールはVB6サポート方針の対象外であり、各ベンダーへ確認する必要があると明記しています。
したがって、VB6アプリの将来性は、EXEが起動するかどうかだけでは判断できません。
VB6資産で優先的に調査するもの
プロジェクトファイル
.vbp
フォーム
.frm
標準モジュール
.bas
クラス
.cls
ActiveX
.ocx
.dll
データベース
.mdb
.accdb
帳票
.rpt
設定
.ini
.reg
VB6ランタイムは現在も32bitのみ
VB6ランタイムは、2026年現在も32bitです。
64bit版Windowsでは、WOWと呼ばれる32bit互換環境上で動作します。VB6 IDEの64bit版は存在せず、32bit版IDEも64bit Windows上では公式サポートされません。
そのため、次の問題が残ります。
- 64bit DLLを直接呼び出せない
- 64bitアプリのプロセス内へロードできない
- 32bit ODBCドライバーが必要
- 4GBを超えるアドレス空間を利用できない
- 64bit Officeとの直接連携に制約がある
- 32bit ActiveX登録が必要
VB6アプリが現在動いていても、周辺システムが64bit専用になった時点で接続できなくなる可能性があります。
VB.NETは終了するのか
VB.NETについても、Microsoftは廃止を発表していません。
しかし、MicrosoftのVisual Basic言語戦略には、今後の位置付けが明確に記載されています。
Visual Basicは、単純で親しみやすく、安定した設計の言語として維持されます。.NETランタイムとコアライブラリの改善はVBにも反映されます。
一方、C#や.NETに新機能が追加され、その利用に新しい言語構文が必要な場合、VBでは新構文を積極的に追加せず、可能な範囲で利用側だけを対応する方針です。
さらに、Visual Basicを新しいワークロードへ拡張しないことも明記されています。今後の投資対象は、Windows Forms、ライブラリ、Visual Studio体験、C#との相互運用などの中核領域です。
この方針を簡単に表現すると、次のようになります。
VB.NETは廃止しない
↓
既存アプリを保守できる状態は維持する
↓
.NETのライブラリ改善は利用できる
↓
ただし新しい用途の中心にはしない
↓
新しい言語機能はC#ほど増やさない
VB.NETは死んでいません。
しかし、Microsoftがクラウド、AI、Web、モバイルなどの新規開発を託している中心言語でもありません。
VB.NETを継続しやすい用途
- Windows Forms
- 既存の.NET Framework業務アプリ
- 社内向けWindowsツール
- 既存クラスライブラリ
- C#との相互運用
新規開発では慎重に判断する用途
- クラウドネイティブサービス
- コンテナ中心のバックエンド
- 最新のASP.NET Core
- AIエージェント
- クロスプラットフォームUI
- モバイルアプリ
.NET移行ツール自体もAIへ置き換わった
2026年には、Microsoftの.NET Upgrade Assistantが正式に非推奨となりました。
後継として案内されているのは、Visual Studioに組み込まれたGitHub Copilot modernization agentです。
このエージェントは、プロジェクトと依存関係を分析し、移行計画を作り、非推奨APIの置き換えやビルドエラーの修正を支援し、変更ごとにコミットを作成します。
ただし、対象を正しく理解する必要があります。
VB.NET Frameworkアプリ
↓
最新.NETへの移行支援対象
VB6アプリ
↓
そのまま自動変換するツールではない
VB6とVB.NETは、名前が似ていても別のアーキテクチャです。
VB6アプリをVB.NETへ移す場合は、フォーム、COM、データアクセス、エラー処理、文字列、配列、既定プロパティなどの差を確認する必要があります。
本当にWindowsから消えるのはVBScript
VBAには廃止予定が公表されていない一方、VBScriptには明確な段階的廃止計画があります。
Microsoftは2023年10月にVBScriptを非推奨とし、三段階でWindowsから削除する方針を発表しました。
Phase 1
Windows 11 version 24H2以降では、VBScriptはFeature on Demandとして提供され、初期段階ではインストール済みかつ有効な状態です。
Phase 2
Microsoftの計画では、2027年前後にVBScriptが既定で無効になります。
引き続き必要な環境では、オプション機能として手動で有効化する必要があります。
Phase 3
将来のWindowsでは、VBScriptのDLLを含む機能全体が削除されます。
この段階では、VBScriptへ依存したアプリケーションやスクリプトは動作しません。
2024年~
Feature on Demandとして標準搭載・有効
↓
2027年前後
既定で無効
↓
将来
Windowsから完全削除
Microsoftは、Windows自動化ではPowerShell、Web用途ではJavaScriptへの移行を推奨しています。
VBScript廃止で影響を受けるもの
調査対象は、拡張子が.vbsのファイルだけではありません。
- ログオンスクリプト
- スタートアップスクリプト
- タスクスケジューラ
- cscript.exeを呼ぶバッチ
- wscript.exeを呼ぶアプリ
- WSFファイル
- HTAアプリ
- インストーラーのカスタムアクション
- VBScriptを内部利用する古い業務アプリ
- VBScriptのCOMコンポーネントを利用するVBA
特にExcelやAccessのVBAでは、正規表現のために次のコードが利用されていることがあります。
Set re = CreateObject("VBScript.RegExp")
これはVBA言語の正規表現機能ではありません。
Windows上のVBScript関連COMコンポーネントを外部から呼び出しています。
将来、VBScriptのDLLがWindowsから削除された場合、この形式のコードも影響を受ける可能性が高いため、早めに棚卸しすべきです。これはMicrosoftのVBScript完全削除方針から導ける技術的な推論です。
社内のVBScript依存をPowerShellで検索する
次のPowerShellは、指定したフォルダからVBScript関連のファイルと文字列を検索します。
$Root = "C:\CompanyFiles"
$Output = "C:\Temp\vbscript_inventory.csv"
$Patterns = @(
'VBScript\.RegExp',
'CreateObject\s*\(\s*"VBScript',
'CreateObject\s*\(\s*"WScript',
'WScript\.Shell',
'WScript\.Network',
'cscript\.exe',
'wscript\.exe',
'\.vbs\b',
'\.wsf\b'
)
$Extensions = @(
"*.vbs",
"*.wsf",
"*.hta",
"*.bat",
"*.cmd",
"*.ps1",
"*.bas",
"*.cls",
"*.frm",
"*.txt",
"*.ini",
"*.xml",
"*.config"
)
$Results = foreach ($File in Get-ChildItem `
-Path $Root `
-Recurse `
-File `
-Include $Extensions `
-ErrorAction SilentlyContinue) {
foreach ($Pattern in $Patterns) {
$Matches = Select-String `
-Path $File.FullName `
-Pattern $Pattern `
-AllMatches `
-ErrorAction SilentlyContinue
foreach ($Match in $Matches) {
[PSCustomObject]@{
File = $File.FullName
Extension = $File.Extension
Pattern = $Pattern
LineNumber = $Match.LineNumber
Line = $Match.Line.Trim()
Modified = $File.LastWriteTime
}
}
}
}
$Results |
Sort-Object File, LineNumber |
Export-Csv `
-Path $Output `
-NoTypeInformation `
-Encoding UTF8
Write-Host "出力完了: $Output"
Excelファイル内のVBAコードは、通常のファイル検索では直接読めません。
マクロをエクスポートするか、VBAプロジェクト解析ツールを利用して、.bas、.cls、.frmとして調査する必要があります。
新しいOutlookではVBAが使えない
ExcelやAccessのVBAよりも、将来の影響が明確なのがOutlookです。
Microsoftは、新しいOutlook for WindowsではVBAとマクロをサポートしないと明記しています。
代替手段として案内されているのは、Power Automate、Microsoft Graph API、Office.jsです。
また、新しいOutlookではCOMアドインもサポートされません。
COM/VSTOアドインを利用している場合、Webアドインへの移行が必要です。
影響を受ける代表的な処理
- 受信メールの添付ファイルを自動保存
- 件名や送信者による自動処理
- メール受信イベントで基幹システムへ登録
- Excel VBAからOutlook.Applicationを操作
- Accessから定型メールを送信
- Outlook終了時や起動時の処理
- 独自COMアドイン
- VSTOアドイン
- MAPIを利用したデスクトップ連携
Classic Outlookは、既存インストールについて少なくとも2029年まで利用可能とされています。
ただし、「2029年まで何もしなくてよい」という意味ではありません。
Outlook VBAやCOMへ依存する業務は、Classic Outlookを延命しながら、段階的に移行する必要があります。
| 現在の処理 | 主な移行候補 |
|---|---|
| メール受信時の自動処理 | Power Automate、Graph Webhook |
| 添付ファイル保存 | Power Automate、Graph API |
| Outlook画面へのボタン追加 | Office.js Webアドイン |
| メール送信 | Microsoft Graph、Power Automate |
| 社内システムとの連携 | Graph API+Web API |
Office ScriptsはVBAの完全後継ではない
Microsoftは、VBAマクロをデスクトップ向け、Office Scriptsを安全なクロスプラットフォーム・クラウド向けと説明しています。
両者は競合する部分もありますが、設計目的が違います。
| 項目 | VBA | Office Scripts |
|---|---|---|
| 主な実行場所 | Officeデスクトップ | Excel Web、Windows、Mac |
| 対応Office | Excel、Word、Access、Outlook等 | Excelのみ |
| 言語 | Visual Basic for Applications | TypeScript |
| PC上のファイル操作 | 可能 | 不可 |
| COM/OLE | 可能 | 不可 |
| Excelイベント | 対応 | 非対応 |
| Power Automate | 直接コネクタなし | 対応 |
| 無人実行 | 苦手 | Power Automateから可能 |
| 端末へのアクセス権 | Excelと同等 | ブック中心に制限 |
Office Scriptsは、次の処理に適しています。
- Excel表の定型整形
- テーブル作成
- 数式の入力
- 不要行の削除
- 集計シートの生成
- Power Automateからの定期実行
- 複数利用者でのスクリプト共有
一方、次のVBAは簡単には移行できません。
- Worksheet_Changeイベント
- UserForm中心の入力システム
- Windows API
- ローカルフォルダの一括処理
- Accessとの連携
- Outlook COM操作
- ActiveXコントロール
- 外部DLL呼び出し
Office ScriptsではExcelレベルのイベントをサポートせず、手動実行またはPower Automateからの呼び出しで動作します。
Office ScriptsはVBAの後継ではなく、VBAが担当していた仕事の一部分をクラウドへ移すための技術です。
Python in ExcelもVBAの後継ではない
Python in Excelでは、Excelセル内からPythonを実行し、pandas、NumPy、Matplotlibなどを利用したデータ分析ができます。
しかし、Pythonコードは利用者のPC上ではなく、Microsoft Cloud上のHypervisorで分離されたコンテナ内で実行されます。
Pythonコードには、次の制限があります。
- 利用者のPCへアクセスできない
- デバイスへアクセスできない
- 利用者アカウントへアクセスできない
- ネットワークへアクセスできない
- ユーザートークンへアクセスできない
- 参照されたセルやPower Queryデータだけを利用する
コンテナ内部では一時的なファイル操作やシェル処理が可能な場合がありますが、利用者のローカルPCを操作するものではなく、コンテナはセッション後に破棄されます。
Python in Excelが得意な処理
- 統計分析
- 回帰分析
- 外れ値検出
- データクレンジング
- 高度なグラフ
- 時系列分析
- 機械学習
VBAの代わりにならない処理
- 指定フォルダ内のExcelを順番に開く
- PDFをローカルへ保存する
- Outlookからメールを送信する
- Windowsアプリを操作する
- 基幹システムへキー入力する
- プリンターを切り替える
- Windows APIを呼び出す
また、Python in ExcelはiPad、iPhone、Android版Excelでは利用できません。対応していない端末ではブックを表示できますが、Pythonセルの再計算時にエラーになります。
Python in ExcelはVBAの自動化機能を置き換えるものではなく、Excel内の分析能力を拡張するものです。
64bit OfficeでVBAが壊れる本当の原因
古いVBA資産では、Windows APIを呼び出すDeclare文が利用されています。
64bit版Officeでは、すべてのDeclare文にPtrSafeが必要です。
ただし、Microsoftは、単にPtrSafeを追加するだけでは64bit対応にならないと明記しています。
古い32bit用コード
Declare Function GetActiveWindow _
Lib "user32" () As Long
間違った修正
Declare PtrSafe Function GetActiveWindow _
Lib "user32" () As Long
このコードはPtrSafeを付けていますが、戻り値は32bitのLongのままです。
64bitポインターが32bitへ切り詰められ、誤動作やクラッシュの原因になります。
正しい修正
Declare PtrSafe Function GetActiveWindow _
Lib "user32" () As LongPtr
Microsoftは、ポインターとハンドルにはLongPtr、64bit整数にはLongLongを利用するよう案内しています。
32bit/64bit共通コード
#If VBA7 Then
Private Declare PtrSafe Function GetActiveWindow _
Lib "user32" () As LongPtr
#Else
Private Declare Function GetActiveWindow _
Lib "user32" () As Long
#End If
さらに、Declare文だけでなく、次も確認する必要があります。
- 戻り値を受け取る変数
- ユーザー定義型
- ハンドルを格納する配列
- CopyMemory等のAPI
- コールバック関数
- ウィンドウプロシージャ
- 32bit専用ActiveX
VBA・VB6資産を自動で棚卸しする
最初に、社内ファイルサーバーから関連ファイルを抽出します。
$Root = "\\fileserver\share"
$Output = "C:\Temp\visual_basic_assets.csv"
$TargetExtensions = @(
".xlsm",
".xlam",
".xltm",
".docm",
".dotm",
".pptm",
".potm",
".accdb",
".accde",
".mdb",
".mde",
".vbp",
".frm",
".bas",
".cls",
".ctl",
".pag",
".vbs",
".wsf",
".hta",
".ocx",
".dll",
".rpt"
)
Get-ChildItem `
-Path $Root `
-Recurse `
-File `
-ErrorAction SilentlyContinue |
Where-Object {
$TargetExtensions -contains
$_.Extension.ToLower()
} |
Select-Object `
FullName,
Extension,
Length,
CreationTime,
LastWriteTime,
@{
Name = "SizeMB"
Expression = {
[Math]::Round(
$_.Length / 1MB,
2
)
}
} |
Export-Csv `
-Path $Output `
-NoTypeInformation `
-Encoding UTF8
Write-Host "資産一覧を出力しました: $Output"
次にコード上の危険依存を検索する
$Root = "C:\ExportedVBSource"
$Output = "C:\Temp\vb_dependency_scan.csv"
$Patterns = @{
"VBScript" =
'VBScript\.|wscript\.exe|cscript\.exe'
"OutlookCOM" =
'Outlook\.Application|Outlook\.MailItem'
"WindowsAPI" =
'^\s*(Private\s+|Public\s+)?Declare'
"PtrSafe" =
'\bPtrSafe\b'
"PointerLong" =
'As\s+Long\b'
"ActiveX" =
'CreateObject|GetObject'
"Shell" =
'\bShell\s*\(|WScript\.Shell'
"FileSystem" =
'FileSystemObject|Scripting\.FileSystemObject'
"DAO" =
'\bDAO\.|CurrentDb|OpenDatabase'
"ADO" =
'\bADODB\.|ConnectionString'
"Access" =
'Access\.Application'
"Excel" =
'Excel\.Application'
}
$Files = Get-ChildItem `
-Path $Root `
-Recurse `
-File `
-Include *.bas,*.cls,*.frm,*.ctl,*.vbs `
-ErrorAction SilentlyContinue
$Results = foreach ($File in $Files) {
foreach ($Category in $Patterns.Keys) {
$Matches = Select-String `
-Path $File.FullName `
-Pattern $Patterns[$Category] `
-AllMatches `
-ErrorAction SilentlyContinue
foreach ($Match in $Matches) {
[PSCustomObject]@{
Category = $Category
File = $File.FullName
LineNumber = $Match.LineNumber
Line = $Match.Line.Trim()
}
}
}
}
$Results |
Sort-Object Category, File, LineNumber |
Export-Csv `
-Path $Output `
-NoTypeInformation `
-Encoding UTF8
Write-Host "依存関係調査を出力しました: $Output"
VB6互換を目指すtwinBASICという選択肢
日本語圏ではまだ情報が少ないものの、VB6とVBAに高い互換性を持つ新しい言語・開発環境としてtwinBASICが開発されています。
twinBASICは、既存のVB6プロジェクトを開き、同じコードベースから32bitと64bitのWindowsアプリを生成することを目指しています。
公式サイトでは、ネイティブ64bitコンパイル、Unicode、COM、現代的なIDE、ジェネリクス、オーバーロード、インターフェース、パッケージシステムなどが案内されています。
2026年のロードマップ
2026年4月17日更新の公式ロードマップでは、Version 1のRelease Candidateを2026年11月16日、正式版を2026年12月14日に公開する暫定計画が示されています。
日程は暫定で変更される可能性があります。
2027年には、Linux、Mac、Androidなどのクロスプラットフォーム対応も計画されていますが、これも将来計画であり、現時点の完成機能として評価すべきではありません。
twinBASICが注目される理由
- VB6/VBAに近い文法
- 既存VB6プロジェクトを開ける
- 32bit/64bitネイティブコンパイル
- COM DLLや標準DLLを作成可能
- Unicode対応
- 現代的なデバッガー
- 既存コードを残しながら拡張できる
さらにtwinBASICには、古いMSCOMCTL.OCXへの依存を減らすため、Win32の標準コントロールを利用した互換パッケージも用意されています。
注意点
twinBASICは、2026年7月時点ではまだ正式なVersion 1へ到達していません。
公式FAQでも、ベータ後期であり、未実装または完全互換ではない機能が残っていると説明されています。
したがって、いきなり基幹システムを本番移行するのではなく、次の順番で評価します。
- 小規模な社内ツールを読み込む
- コンパイルエラーを記録する
- 画面と帳票を比較する
- 32bit版を作る
- 64bit版を作る
- OCX、DLL、DB接続を確認する
- 実データを使わず受入試験を行う
RAD Basicという別のVB6互換環境
RAD Basicも、VB6の.vbp、.frm、.bas、.clsを変換せずに開き、ネイティブWindowsアプリを生成することを目標としたプロジェクトです。
生成したEXEはVB6ランタイムや.NETランタイムを必要としないネイティブ実行ファイルを目指しています。
ただし、開発環境自体は.NETを利用します。
現在の制限
公式の互換表では、現時点で主に対応しているプロジェクト種別はStandard EXEです。
ActiveX DLL、ActiveX EXE、OCXについては今後の対応とされています。
そのため、RAD Basicも「今すぐ全VB6システムを移せる完全互換製品」ではありません。
| 項目 | twinBASIC | RAD Basic |
|---|---|---|
| VB6互換目標 | あり | あり |
| 64bit | 対応 | 対応を提供 |
| COM開発 | 比較的強い | 一部開発中 |
| ActiveX DLL/OCX | 対応範囲が広い | 互換表では今後対応を含む |
| 現在の状態 | ベータ後期 | ベータ・開発中 |
| 評価方法 | 実プロジェクトで検証 | 互換表を確認して検証 |
どの技術へ移行すべきか
VBAやVB6を一律にC#へ書き換える必要はありません。
用途ごとに移行先を選びます。
| 現在の資産 | 推奨方針 |
|---|---|
| Excel内で完結する小規模VBA | 署名して継続、またはOffice Scripts |
| Excelのイベント・UserForm中心 | VBA継続またはWebアプリ化 |
| Power Automateで無人実行したいExcel処理 | Office Scripts |
| Excelの統計・分析処理 | Python in Excel |
| Outlook VBA | Power Automate、Graph API、Office.js |
| Access VBA | 短期継続、DBと画面の段階分離 |
| VBScript管理処理 | PowerShell |
| 小規模VB6ツール | twinBASIC検証または.NET再構築 |
| 大規模VB6基幹システム | API化、段階分離、業務単位で再構築 |
| VB.NET WinForms | 最新.NETへ移行して継続 |
VBAを継続してよい条件
- Officeデスクトップでのみ利用する
- 処理がExcelやAccess内で完結する
- 担当者と責任者が明確
- ソースコードを保管している
- 32bit/64bitの両方で試験している
- デジタル署名を利用している
- バックアップがある
- 利用端末とOfficeバージョンを管理している
- 外部システム依存が少ない
移行を急ぐべき条件
- Outlook VBAへ依存している
- VBScriptを利用している
- 担当者しか仕様を知らない
- ソースコードがない
- VB6 IDEでしか修正できない
- 古いOCXへ依存している
- 32bit Officeでしか動かない
- Internet Explorerへ依存している
- Windows APIを大量に呼んでいる
- メール添付でマクロを配布している
- デジタル署名がない
- 基幹業務なのにテスト環境がない
2026年から2030年までの現実的な計画
2026年:全資産を発見する
- xlsm、xlam、accdb、mdb、vbp、vbsを検索
- 利用者、担当者、業務名を登録
- VBScript依存を検索
- Outlook VBAとCOMアドインを抽出
- 32bit専用部品を確認
2027年:VBScriptとOutlook依存を優先移行
- VBScriptをPowerShellへ移行
- 新しいOutlookで動かない処理を分類
- Power AutomateとGraph APIの試験
- VBScript.RegExp依存を置き換え
2028年:VBAを管理対象へ変える
- 社内コード署名証明書を導入
- 信頼された発行元を配布
- マクロ台帳を整備
- 64bit Office試験を完了
- 利用されていないマクロを廃止
2029年:Classic Outlook依存を解消する
- Outlook VBAを原則廃止
- COMアドインをWebアドインへ移行
- メール連携をGraph APIへ統一
- Classic Outlook専用業務を残さない
2030年:VB6の残存領域を限定する
- 保守可能なアプリだけを隔離運用
- twinBASIC等の互換環境を評価
- 基幹処理をAPI化
- DBと画面を分離
- 新規機能をVB6へ追加しない
よくある誤解
VBAは2027年に終了する
終了する予定が示されているのはVBScriptです。
VBA自体の廃止時期は公表されていません。
VB6はWindows 11で非対応
VB6 IDEは非サポートですが、VB6ランタイムはWindows 11でサポートされています。
VB.NETも廃止される
廃止ではありません。
安定した設計を維持し、Windows Formsやライブラリ等を中心に継続します。ただし、新しいワークロードへ拡張しない方針です。
Office Scriptsへ移せば全VBAを廃止できる
Office ScriptsはExcelクラウド自動化向けです。
イベント、UserForm、COM、ローカルファイル、Access、Outlookなどを利用するVBAは、そのまま移行できません。
Python in Excelで業務自動化できる
Python in Excelはクラウド上の隔離コンテナで動作し、利用者のPCやネットワークへアクセスできません。主用途は分析です。
PtrSafeを追加すれば64bit対応は完了する
不十分です。
ポインターやハンドルはLongPtrへ、64bit整数はLongLongへ変更する必要があります。
twinBASICなら無条件で全VB6アプリを移行できる
twinBASICは有力ですが、現時点ではベータであり、プロジェクト固有の互換性検証が必要です。
最終結論
Visual Basicは、一斉に終了するわけではありません。
それぞれの技術は、次のように異なる未来へ進んでいます。
VBA
→ Officeデスクトップ内で残る
→ 署名・管理・64bit対応が必要
VB6
→ IDEは終了済み
→ 既存EXEはWindows 11でも動く
→ 32bitとOCX依存が将来の障害
VB.NET
→ 廃止されない
→ 安定・保守路線
→ 新規ワークロードの中心にはならない
VBScript
→ 2027年前後に既定無効
→ 将来のWindowsから完全削除
Outlook VBA
→ Classic Outlookでは利用可能
→ 新しいOutlookでは利用不可
Office Scripts
→ Excelのクラウド自動化を担当
Python in Excel
→ データ分析を担当
twinBASIC・RAD Basic
→ VB6資産を残しながら近代化する新しい可能性
企業が今すぐVBAとVB6を全廃する必要はありません。
しかし、「今動いているから、今後も動く」と考えて放置するのは危険です。
最初にすべきことは、書き換えではありません。
どこに、何があり、誰が使い、何へ依存しているかを把握することです。
そのうえで、資産を次の五つに分類します。
- そのまま継続する
- 管理と署名を追加する
- 64bit対応へ改修する
- Office Scripts、PowerShell、Graph等へ移行する
- 別システムとして再構築する
VBAは死にません。
VB6も、すぐには消えません。
しかし、Visual Basic資産を、担当者の記憶と古いPCだけで維持する時代は終わります。
Visual Basicの未来を決めるのは、言語の寿命ではなく、企業が資産を管理し、依存関係を把握し、段階的に移行できるかどうかです。
公式・参考資料
- Microsoft:Visual Basic 6.0 Support Statement
- Microsoft:Visual Basic言語戦略
- Microsoft:VBScript廃止ロードマップ
- Microsoft:Office ScriptsとVBAの違い
- Microsoft:新しいOutlookのVBA代替策
- Microsoft:COMアドインからWebアドインへの移行
- Microsoft:Python in Excelのセキュリティ
- Microsoft:64bit VBAの対応方法
- Microsoft:GitHub Copilot modernization agent
- twinBASIC公式ロードマップ
- twinBASIC公式ドキュメント
- RAD Basic公式互換表
本記事は2026年7月28日時点で公開されている公式情報を基にしています。twinBASICおよびRAD Basicは開発中のため、ロードマップ、対応機能、ライセンス、リリース日は今後変更される可能性があります。本番システムへ採用する前に、必ず最新情報と実プロジェクトでの互換性を確認してください。